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透き通っている

by Ryota Nagashima

高校生の弟を連れてアメリカ西海岸を下る旅をしている。シアトル.ポートランド.サンフランシスコ.ラスベガス.ロサンゼルス.サンディエゴを3週間で回る旅だ。今いる都市はラスベガス。魅惑と欲望の街は休むことを知らず轟々と光を帯びている。

いわゆる「旅」という経験をこれまでの人生の中で持たなかった弟にとってこの3週間はとても刺激的なものだと思う。

飛行機の揺れに不安がり、日本とは違う環境に驚く彼は愛おしい。そして目に見えるように成長していく姿を隣で感じている自分がいる。帰国した時にどのような顔になっているのか今からとても楽しみだ。

***

「涙が出そうだよ。」

感動と言う言葉は弟から今日何度も聞いていたけれど、涙が出そうはその時が初めてだった。

僕らはアメリカの絶景スポットを回るツアーに1日参加していた。どこまでも続く空の青や、大地が作り出す幻想的な岩、地平線から登る朝日。日本とは全く違った光景に大興奮の僕らは「めっちゃすげー!」とか「感動するね~。」と言い合っていた。

そしてグランドキャニオンを訪ね、これまで見たことのない大自然と夕日を見て、彼は言った。涙が出そうだと。

すかさず僕はこう聞いた。

「どうして涙が出そうなの?」

我ながらいやらしい兄だと思っている。

もし自分に兄がいてこのように聞かれてもきっと答えなかっただろう。現に彼も少し戸惑っている。

「例えば大自然を前にしてちっぽけな自分を知ったとかさ。こんなに世界が大きいんだし自分は何をしてもいいんだという前向きなものかもしれないし、逆に孤独を感じて切なさからくる涙とかもしれないじゃん?」と僕は続けた。

「孤独。そうかもしれない、けど少し違うかな。」

そして少し間が空いて、

「あ、分かった。」と言った。

そしてこう続けた。

「世界にはこんなにも美しいところがあるのを知る事ができたからなんだ。」

僕は言葉に詰まった。

「それは良い涙だね」とだけ答えた。

心が動いた瞬間だった。

そう。いまこの景色を見て彼の世界は大きく広がった。それはまるで目の前にある果てしない荒野のように縦にも横にも広がったものかもしれないし、長い洞窟を抜けて見えた新しい景色のような広がりだったのかもしれない。

透き通った目を輝かせてそう答えた弟に少し嫉妬さえ覚えた自分がいた。

彼の世界を広げた景色を彼の目から見たときにどのような感情が生まれるのか知りたいと素直に思ったから。彼の放った言葉はそのくらいに力のあるものだったんだ。

こうやって自分の中の世界は広がっていくんだと思う。

何がきっかけなのかは人によってそれぞれだけど、確かに世界は広がる。

広げ方を知った彼はこれからますます自分の世界を作っていくのだろう。

弟はこれから大学生。いまの僕と同じ23歳になった時にどんな青年になっているんだろう。今日の景色が一つのきっかけになったんだよと言っているんだろうか。今からその時を迎えるのがとても楽しみだ。僕の世界だって、まだまだちっぽけで。これからも広がりを見せていくのだろうし。

「旅」は人を成長させる。そして自分の世界を広げるきっかけになり得るものだと思っている。その中で「言語化」を行うこと。自分の声に気付くために大切なんだと改めて感じた。

兄弟でさえ、同じ景色を見ても感じ方が全然違う。それらを感じながら旅ができることはとても面白い。例えば世界が広がった瞬間を横に立って実感することだって出来る。

そして面白いことに、その喜びや感動は僕にとって、どんなに美しい自然にも勝るものだったんだ。

どうやら僕は人に心を動かされるみたいだ。

***

そういえば弟は続けてこうも言っていた。

「この景色をもっとたくさんの人が見れたらいいのに!」

この言葉は彼が将来、自分のキャリアを考える上でヒントになるようなものかもしれないからメモとしてここに残しておこう。

世界が広がれば日々がもっと彩りを持つのだと思う。好奇心が溢れるように生まれてきて興味のあるものに駆け出していく。

なかなか旅が進まない僕たちだけど、まあそれはそれで良いのかな(笑)

それが旅というものだろうし。

「旅をするように毎日を生きる」とは僕らにとってこういうことなんだと思う。

旅をするように毎日を過ごそう。

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