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プレゼントに本を贈ろう。

by Ryota Nagashima

「今年はお互いに本を贈ろう。」

そんな一言で今年のクリスマスは互いに本をプレゼントすることになった。彼女はそんなに本を読む人ではないのだけど面白いと言って、すんなり受け入れてくれた。

 僕は時々、家族へのプレゼントに本を贈る。時間があればふらっと本屋に立ち入る生活をしていると、この本はあの人に贈るといいかもしれないなんて事を思ったりする。だから弟の誕生日にはいまの彼が必要な本はこれだって思ったものをあげるようにしている。プレゼントに本を贈る事が好きだし、その人に合ったものを選ぶ自信もあったりする。だから今回もすんなりと選べるなんて思ってたのだけれど、そんなことはなかった・・・。

 まずは本を選ぶにあたって彼女の趣向を考えた。自分とは読む本も全然違うし、あんまり分厚い本は読んではくれない。最近読んでる本を尋ねてみたり、自分が読んだ本で合いそうなものを思い巡らしてみたり。次に相手に読んでもらいたい本は何か考えた。せっかくの機会だから、自分が普段から好む物語や思想の本を読んで貰いたかったし、本を通して自分の考え方なんかをもっと理解してもらいたいとも思ってた。そんなことを考えながら仕事終わりにに毎日のように色んな本屋を巡っていた。違う本屋を訪ねるたびに、これだと思う本を見つけてしまうから候補はどんどん増えていく。

 本を選ぶって実は難しい。アクセサリーとか服のほうが断然簡単だ。それらは見えたままのモノだから。あとは選ぶ側のセンスだけど、実際はあんまり悩まない。可愛いや美しいは見たままに表現されているから。対して本になると、表紙を見たからといって本の内容は分からない。一度読んだことがある本を贈るっていう手はあるけれど、貧乏性の僕は、相手が読み終わったあとに自分も読もうと思ってしまうから、読んだ事がない本を選ぼうと思ってしまう。だから本を選ぶ時ってほとんど祈りに近いような、筆者に良いものを書いてくれていますようにお願いする気持ちで買っている。相手もどきどきだけど、自分だってどきどきだ。まあそこが面白かったりもするのだけれど。

 本の候補をだんだんと絞っていく。もちろん自分が読んで欲しいものを選ぶって軸も大切にするべきだけれど、今回はなるべく自分のエゴは捨てて、彼女の好きを大切にしようと思った。そうやって想いを巡らせて生まれた軸が「食べもの」と「エッセイ」

美味しそうなレストランを探すことが好きな彼女に、エッセイ調の言葉で食べることを語った本を贈ることはぴったりだと思ったし、思い返してみると僕らの繋がりには糸井重里のエッセイ集があったから、僕から贈る本はエッセイにしようと思った。そこに少しだけ自分色を加えるために、好きな作家の作品を選んだ。悩みに悩んで選んだ本を手に取った時に感じた、本の重みと満足感はなかなか良いものだった。

 

 お互いに買った本を贈り合う日を迎えて、理由とともにプレゼントする。僕が選んだ本は、宮下奈都さんの「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」

優しい言葉が丁寧に紡がれる文章は読み終わったあとに温かいものに包まれるような気分になる。そんな作品を描く宮下さんが、食べものを通した暮らしをまとめたエッセイは素敵だろうと思って選んだ。ここまで辿り着くのにどれだけ時間がかかったことか。そんなことをだらだら話すと、彼女はふっと笑う。続けて彼女の話を聞くと、どうやら全く悩まなかったらしい。

「難しいことは考えないの。私が読みたいものを贈ろうと思った。」

なるほどなって思った。自分の読みたいものを贈る。本を選ぶのに正解なんてもちろん無いけれど、これ程分かりやすくて、すっと受け入れられる理由もないんじゃないかと思った。「自分が読みたい本は相手もきっと読みたい本だろう。」うん。その通りだった。

「本を贈る。」ことは面白い。

思っている以上に相手について考えるし、なによりも本が読みたくなる。探してみると改めてたくさんの本に出会って、その中から選んだ一冊は自分にとっても贈る相手にとっても大切な一冊だ。それは想いの乗った長い手紙のように相手に届くだろう。読み終わったあとにどうだったかを話す時間も含めてプレゼントのようなものだから、しばらく楽しみは続きそうだ。

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