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秋の匂い

by Ryota Nagashima

「秋の匂いがする。」

 詩的な響きが感じられ、発した途端にちょっぴり得意げな気分になるフレーズ。一方で他人からはふっと鼻で笑われる言葉。季節の変わり目に何かを通じて四季を感じると、それを言葉にして共有したくなるのは四季を持つ国に住む人々の本能なんじゃないかと思ってて。恥ずかしいし馬鹿にされるだろうから普段はもちろん口にはしないけれども。

なんて事を考えていて、ふと季節の変わり目を感じるきっかけは自分にとってどんなものだろうかと思い始めた。

そして、どうやら季節ごとに感じ方と表現の仕方は変わってくることに気づく。この微妙な違いが四季への味わいを深めているのかもしれない。

 一番わかりやすいのは「夏」だろう。

体で感じ取る暑さに僕たちは敏感だ。

 「冬」は聴覚的な表現が好きだ。

「雪の音がする」といえば、辺りはしんと静まり、冷え切った空気。空からちらちらと雪が地上へと降り注ぐ情景が思い浮かぶ。

 「春」は新しいことが始まる季節。

ワクワクやドキドキといった感情の揺さぶりによって感じられる気がする。

 そして「秋」は匂いが一番しっくりくる。何の匂いと言われれば、これと言って答えられないのだけれど、日本人ならその香りが思い浮かぶから凄い。そもそも四季の間って、はっきりしたものではないのだから、当然分かり辛い。

その分かり辛さを感じ取れる感性って、自分たちにとっては当たり前のようで実はとても貴重なものだと思う。

というのも、今の生活は自然に囲まれて四季を感じやすい環境に身を置いているのだが、住んでいる家に日本人は僕だけで、四季を持たない国に住む人々ばかり。そんな人たちに向かって感覚で季節の移ろいを表現したところでぽかんとされるだけなのは目に見えている。日本人的な「あいつ自分の言葉に酔ってるぜ。」みたいな視線ではなく、本当に「何言ってるんだこいつ?」なのだ。言葉に酔っていると感じる受け手はその言葉の理解を少なからず理解はしているものだ。この違いは非常に大きいと思う。

 この感性を磨くために、冷やかしたくなる気持ちを抑えて、気恥ずかしさを乗り越えて、それぞれが季節の変わり目をどのように感じるのか、もっと共有されたら面白いなぁと思って。

だから試しに「秋の匂いがする」と言ってみた。

「自分に酔ってるねぇ。」とつっこまれるくらいに粋で美しい言葉をたくさん聞きたい。

 ちなみに、古語「匂ふ」は、かおりが漂うことや鮮やかに色づくこと、内面の美しさのあふれ出る様を表していて、決して嗅覚だけを指すのではなくて、視覚、雰囲気にまで発展する感覚を言い表した語だったようだ。そんな話を聞いたから「匂い」という言葉を使ってみたかったから、長々と文章を書いてみたっていうのがここだけの話でした。おわり。

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