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伝統工芸の話

by Ryota Nagashima

「なぜ伝統工芸品は、

日本において現在まで残っているのか。」

この問いの答えが日本人ならすっと落ちていく答えだったので、ぜひ味わってもらいたい。

現在の僕の日常は、住んでいる家と二人の工芸士の住む仕事場を行き来する毎日だ。

お二人はそれぞれ紙漉きと織物の職人で、

仕事を覗き見するのが楽しみの一つである。

今日は、いつもは見ないとても薄い紙を漉いていて、話を聞くとどうやら日本刀の工芸士に送る紙らしい。

最後の仕上げに紙に砥石を付けて研ぐのだそうだが、最近それまで使っていた紙が機械によって作られるようになり、そこから紙の質がイマイチらしく、新たな紙を求めて依頼を受けたとのこと。

この短いストーリーからも工芸士のこだわりとその仕事の緻密さが伺える。

僕なんかが軽々と言葉で表すことが出来ない何かがそこにはあって、

その何かを二人の仕事場に居合わせることで感じることは出来る僕はかなり貴重な体験を日々しているのだと思う。

張り詰めた緊張感の中で、

一切の無駄がない動きから生み出される作品の数々は、それぞれが一つの「美」として存在している。

「美しいですね」と何度伝えたことか。

そしてその度に自分の語彙力の幅の狭さに窮屈を感じ、何と言えば良かったのかと思いを巡らせる毎日だ。

***

「どうして伝統工芸と呼ばれ、今でも日本でそれらの技術が継がれてきたか分かるか?」

熊本でのワークショップの帰り道に運転席に座る彼は僕に問う。

突然の問いに必死に考えを巡らせるも、

それらしい答えはなかなか頭に浮かばない。

すると彼は続けて問いかける。

「武士における刀とは何だと思う?」

答えに走る僕は答えを求めた。

「武士が刀で人を切る数は実は少ない。

それでも肌身離さず持ち続け、眠る時は刀を側に置いて眠ったものだ。そこまでして武士が刀を大切にした理由。それは刀を単なる道具としてではなく、お守りとして持っていたからなんだよ。

日本において工芸品が今日まで残ったのは、

そういった日本人の心があってこそなんだ。」

「そして、この程度でいいやという思考ではなく、より追求していく精神を持ち合わせていたからこそ今も残り続けている。」

物に機能としての価値を超えた意味を与え、

それらを大切にする心を昔から日本人は持っていて、その精神が今もなお受け継がれている。

それが伝統工芸品としてこの地に残っている。

職人の方々から発せられる「生きている言葉」は考えさせられる事ばかりだ。

たくさんのエピソードがある中でのほんの一つのお話。

これからも少しづつ発信したい。

日本において「本物」は脈々と受け継がれているのに、僕らはなかなかそれらを見つけられない。見ようとしない僕らは何を見て感動を覚えるのか。

本物の空気を吸って、様々な角度から眺めて、触ったり撫でたりして、生み出される瞬間に立ち会って。

いま僕はそんなことをしている。

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