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好きな色

by Ryota Nagashima

「青」

仕事が終わり、街へと自転車を走らせる。坂道を駆け上がると目の前に広がる海と空。どこまでも続く澄み切った青は、海と空の境界線を曖昧にする。水面に映る光がきらきらと眩しい。僕は自転車を止めて、ゆっくりと青に浸かってゆく。

「緑」

この地を囲む緑は実に多様だ。それぞれの緑を楽しみながら僕は毎朝歩く。朝の空気はとても新鮮で、静寂に包まれている。それらを感じ、触れ、利用して生活しているとそれぞれが微妙に違った緑だということに気づく。数日前に植えた種はどんな緑になるだろうか。夏の終わりにそれらの緑はどんな色に変わるのか。

「赤」

天気の良い日は絶好の赤日和だ。

日の入りを見計らって、最近見つけたお気に入りの場所へと向かう。辺りは赤に染まり、駆け足になる。

それまでずっと青だった海と空は全く違った景色へと生まれ変わる。ゆっくりと沈んでゆく太陽を眺めながら、僕は一日の終わりを感じる。

子供の頃、「好きな色は?」と尋ねられて、迷っていた記憶がある。一つに決めることが難しかった。それからいくらか経って、周りもそんな質問すらしなくなって、好きな色なんてあまり考えないようになっていた。

いま、「景色」を見ることを意識している。そこには美しい色がたくさんあって、青や緑や赤、花の黄色や夕焼けのオレンジ、言語化できない色にだって出会うようになった。

子供の頃の自分はおそらく色の美しさを知っていて、一つに選ぶなんてことができなかったんだと思う。もちろんこれは後付けで、当時の自分はそんなこと全く考えてもいなかったけれど、改めて色を意識した時にそうだったんだろうと感じた。それほどまでに意識した途端、世界は色鮮やかに変わったんだ。

もし、いつかのタイミングで誰かに「好きな色は?」と聞かれたら、子供の頃のように迷うだろう。ただその迷いはとても前向きだ。なぜなら僕は、美しい自然からたくさんの色を学び、色を知ったからだ。あの時見たあの色はよかったなぁとか、いやでもあれだってよかったし、なんて頭で考えながら答えるのだろう。

明日はどんな「景色」が見られるのか。そんなちょっとした楽しみが一日の幸せに繋がるのかもしれない。

水俣の景色。

この地にはたくさんの「色」がある。

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